ヤマギシズムという暮らし方

 ”ヤマギシ”という団体をご存知だろうか。社会実顕地と呼ばれる1つの集落で、農業を基軸としながら数百人規模の人々が共同生活をしている団体がある。入会時に全財産を没収され貨幣から独立して暮らすユートピアであると、如何わしいオカルト集団として世間を賑わしたこともある。

 最近、ヤマギシは全国最大規模の農事組合法人として農業生産活動をしているらしく、通販で良質な肉や野菜、加工品を販売しているらしい。農業フェアのブースでヤマギシの人と知り合いになり、農場を案内してくれるというので、三重県津市にある豊里ファームと社会実顕地を見学しにいった。

 その土地は広大で、1つの村を形成している規模。そこで生活する人々は、それぞれ与えられた役割があり、それをこなせば何不自由なく暮らしていけるのだそう。例えば、調理、洗濯、掃除など生活に関する役割から、農業として家畜の世話、農作物の栽培、加工施設、販売など多岐にわたっている。

 昼食を食べたが、扱っている素材が素晴らしく、とても美味しかった。その原因は、集落内で完全な循環型農業を構築しており、地産地消を徹底しているからだろう。ストレスのかからない広いゲージで育てている牛、親子一緒に暮らしている豚、そして肉の品質を保つために原種の種を大切に受け継いでいる(鳥インフルが流行していたので鶏の施設は見学できなかった。)。その家畜の糞を発酵させ良質な堆肥をつくり、集落内の畑に投入している。そして、朝採り野菜などを自前の直売所「豊里ファーム」で販売したり、加工施設で製造した乳製品やジャムなどをカタログで通販もしている。

 農業のシステムとしてはこれ以上ないほど充実している。大規模に大型機械を使用して効率的に営農していると同時に、野菜の品種や家畜の原種にこだわり、循環型農業を確立している。また、労働力も豊富に存在している。農業を大規模にする場合、大きな資本力と安価な労働力が必要であり、その両方をヤマギシは有している。

 ここで暮らしている人々が幸せかどうかは、2時間程度見学しただけでは知る由もないが、農業の一形態として優良な事例であることは間違いない。集落営農や農業生産法人についても制約条件が違うだけで共同体であることにかわりはなく、組織として何を目指すのかの違いでしかない。目的が収入の増加であるのか、持続可能な生活を確保することであるのか。事実として言えることは、完全に閉じた社会では暮らしていけないということと、その反面、食べ物を自給自足できる者は生き方を自由に選択することができるということであろう。

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